ハレクラニのホテル アンバサダーを務めるメリッサ・マンカオ=ヤングさんが部屋に入ってくると、彼女が身につけているハワイアン エアルーム ジュエリーのブレスレットのやわらかく心地良い金属音が聞こえてくる。彼女の手首には、2つの金色のブレスレットがきらめいている。それは、ハワイのルーツだけでなく、家族との絆を映し出す大切なものだ。
ひとつは2008年に母親が亡くなった時に遺言によって受け 継いだもので、亡き母を偲ぶ大切な思い出の品である。「Crishelle Kaleiohoku Young」と愛娘の名が刻まれたもうひとつのブレスレットは、いつの日か娘へと託すつもりだ。「母から受け継いだハワイアン エアルーム ジュエリーを身につけていると、オハナ(ハワイ語で「家族」の意)を身近に感じられ、自分を見失わずにいられるのです」と語るマンカオ=ヤングさん。こういったジュエリーは、母の愛の象徴であると同時に、 ハワイ諸島の統一から王国の転覆を経て、今日まで受け継がれてきたハワイ文化の精神を体現するものなのである。
ハワイアン エアルーム ジュエリーの歴史は、ハワイ王国最後の君主であるリリウオカラニ女王にまで遡る。1887年に英国でヴィクトリア女王の即位50周年記念式典が行われた際、当時まだ王女だった彼女に女王からゴールドのブレスレットが授けられたという。英国の君主からハワイの君主へと受け継がれたこの贈り物は、アリイ(王族)からファッションの影響を受けることが多かった当時のハワイの女性たちに新しい伝統文化となる旋風を巻き起こした。時を経るにつれ、これらのブレスレットは単なる高級ジュエリーから愛と継承の象徴となり、大切な家宝として受け継がれるようになった。マンカオ=ヤングさんによれば、それぞれのジュエリーには重要な意味があるという。「そこには必ず物語が潜んでいるのです」
スター・ダール=サーストンさんもこの想いに共感する。「ハワイアン エアルーム ジュエリーのブレスレットは、私にとって常に人生の通過儀礼の象徴であり、人生の節目や歩みを称えるための大切な贈り物なのです」と彼女は語る。「それは、伝統と愛、そして世代を超えて受け継がれる深いつながりを体現しているのです」
ダール=サーストンさんが大切にしているブレスレットがふたつ ある。ひとつは高校卒業の際に祖母から譲り受けたもので、自分の手首に合わせてサイズを調整してもらった。もうひとつは、2023年度ミス ハワイの栄冠を手にした時に、ロイヤルハワイアン ヘリテージ ジュエリー社が特別に彼女の名前を刻印して作ってくれたものだ。「ブレスレットは力強く生き抜いた女性を象徴するもので、そのブレスレットを身につけると、彼女たちが残してくれた伝統への尊敬の念が湧いてくるのです」とダール=サーストンさんは語る。
ハワイの女性たちが身につけているゴールドのブレスレットは一目でそれとわかる。しかし、細部によく目を凝らすと、それぞれに異なる模様や刻印が施されている。ブレスレットは、持ち主の思い出や美意識を映し出しているのだ。「ブレスレットを見れば、アンティー(おばさん)たちのことがわかったものです」と語るのは、ホノルル出身の文化伝承者であり、デザイナー兼レイ職人のメレアナ・エステスさん。「それは、カマアイナ(地元民)の女性たちのアイデンティティのようなものでした」。エステスさんと彼女の幼なじみでハナイ(血縁に関係なく子どもを里子として育てるハワイの風習)の従姉妹であるノエル・ショーさんは、ハワイアンエアルームジュエリーの伝統を継承しながら、現代風にアレンジしたオーダーメイドジュエリーのコレクション「ヒエ エアルームズ オブ ハワイ」を共同創設した。
エアルームジュエリーをデザインすることは、2人にとって必然の流れだった。2023年、共に第一子を妊娠していた2人は、子どもに贈るジュエリーについて考え始める。しかし、2人が思い描く伝統的なブレスレットのデザインを再現できる職人を見つけるのは容易ではなかった。「私たちが見慣れていた、フラットスタイルの落ち着いたブレスレットを作っている人がいなかったのです」とエステスさんは語る。そこで、彼女たちは自分たちで作ることにした。
2人はエステスさんのトゥトゥ(祖母または祖父)の家で何夜もすごし、デザインのアイデアを練ったり、他のジュエリー職人に助言を求めたりした。ハワイ語の専門家に相談を重ねた結果、ブランド名は「美しくする」という意味の「ヒエ」という名前に落ち着いた。家族が受け継いできたジュエリーコレクションを調べる過程で、思いがけず自分たちのルーツを探究することになったという。「学び直したことすべてがどれほど自分と深く結びついていたのか、私は知らなかったのです」と語るエステスさん。「そして、私たちは、ある意味、それを皆さんにも体験してほしいと思っているのです」
エステスさんとショーさんにとって、ジュエリーは単なる装飾品を超えた、過去への美しく意味深いオマージュである。彼女らのコレクションは、それぞれの家系の女家長への敬意を表している。あるブレスレットには繊細なユリのデザインが施されている。これは彼女の名前の由来となった先祖から6世代に渡りショー家に受け継がれてきたブレスレットに着想を得ている。このオリジナルのブレスレットは、1800年代後半にショーさんの高祖母と親交のあった女王自らが贈ったものだ。エステスさんの亡き祖母に因んで名付けられたもうひとつのブレスレット「アメリア・アナ」は、象徴的なオールドイングリッシュ書体の刻印と精巧なエンドキャップ(文字の両端に刻まれたデザイン)が際立つデザインだ。「私たちは、今を生きる女性たち、そして先人の女性たちに敬意を表したかったのです」とエステスさんは説明する。彼女たちのコレクションのその他のジュエリーは、すっきりとしたラインと植物をモチーフにしたアクセントが特徴的で、より現代的な仕上がりになっている。
ショーさんは、100年前のブレスレットの他に、母親から贈られたブレスレットを身につけている。「ノエル」と刻まれたこのブレスレットは、彼女の母親が3人の子どもたちのために作った3つのブレスレットのうちの1つで、子どもたちが大学に進学するまで自らが身につけていたものだ。ハワイを離れて暮らしていた時だけでなく、今でもハワイを離れる時は、このブレスレットがショーさんと故郷を繋ぐ心の支えになっている。「これは名札やバッジのようなもので、文化と伝統への深い愛の証なのです」と彼女は語る。
「ヒエ」でブレスレットを購入する顧客の中には、自分のエアルームジュエリーにまつわる心和らぐ物語をエステスさんやショーさんに話してくれる人が多くいるという。「まるで私たちも、その家族の物語の一部になったような気がするのです」とエステスさんは言う。これは、ハワイアン エアルーム ジュエリーが単に身につけるだけのものでなく、何世代にも渡って大切に受け継がれていることを示す素晴らしい証といえる。