古くから受け継がれてきたハワイの伝統であるレイ作りは、1000年以上も前にポリネシアの航海者たちによってもたらされた。今日、香り高い花々で編まれたレイは、ハワイ諸島を象徴する存在として広く知られている。飛行機を降りた際にプルメリアの花を連ねたレイを首にかけてもらったり、宿泊先のホテルで紫色の蘭のレイを受け取ったりと、ハワイでの最初の思い出がレイと結びついているという旅行者も多い。だが、レイが象徴するのは温かい歓迎の気持ちだけではない。レイ制作者のメレアナ・エステスさんは、著書『Lei Aloha: Celebrating the Vibrant Flowers and Lei of Hawai‘i(レイ アロハ:ハワイの鮮やかな花とレイへの賞賛)』のなかで、「ここハワイでは、レイは単なる贈り物や文化的習慣、あるいは花そのもの以上の存在です。レイは人と人を結びつけ、人間関係、地域社会、感謝の気持ち、そして守護を宿しているのです」と述べている。ハワイでは、レイは誕生日、退職、卒業といった人生の節目を彩り、慶事や功績を称える際に惜しみなく贈られてきた。


結婚式では、とりわけ想いと心配りを込めて選ばれたレイが欠かせない。ハワイの婚礼では、カップルは貴重な素材で丁寧に作り上げられたレイを身に着け、互いに贈り合う慣わしがある。この慣習はカマアイナ(地元民)だけのものでなく、ハワイで結婚式を挙げる多くのマリヒニ(訪問者)にも広く親しまれている。ハレクラニ館内のフラワーショップで、主任フローリストを務めるジョセフ・レイエスは、ハレクラニで行われるほぼすべての結婚式でレイが使われると言う。この伝統に馴染みのないカップルが結婚式用のレイを選ぶ際、季節感や色合いの美しさについてのアドバイスを求める。婚礼用のレイに決まった定義はないが、質感や香りは大切な要素だ。新郎にはマイレ、新婦にはピカケ、パカラナ、イリマなどの人気が高い。いずれも上品で芳しい香りが特徴で、古代から現代に至るハワイの伝統に根ざしている。ここでは、一般的な婚礼用のレイを取り上げながら、今日の結婚式におけるレイの役割と文化的背景をひも解いていく。

イリマ
繊細で紙のように薄いイリマは、淡い金色から深み のあるオレンジ色まで、さまざまな色合いがある花 だ。 1本のレイを作るのに500輪から1000輪もの花を 要するイリマレイは、丹精込めて作られた愛情の結晶 といえる。かつてはレイに使われた最も一般的な花の 一つであり、西洋文化が伝わる以前のハワイでレイ作 りに使われていた唯一の花だったかもしれないといわ れているが、現在ではピカケやプルメリアといった、よ り入手しやすいレイ用の花に比べると、希少な存在と なっている。イリマは王族とのゆかりも深く、その優雅 さと鮮やかな色合いを愛したエマ女王が、羽のように ふんわりとしたレイを幾重にも重ねてよく身につけて いたことで知られている。


マイレ
新郎にはマイレのレイの人気が高い。それは、香り高い蔓 を撚り合わせ、長く作った格式ある伝統的なレイだ。艶の ある葉と優しいバニラのような香りで珍重されるマイレ は、ハワイ文化のなかで何世紀ものあいだ尊ばれてきた。 マイレは、オリ(詠唱)やメレ(歌)のなかでもその美しさが 称えられ、争いあう首長たちが平和の証としてマイレを交 換したという。森とフラの女神であるラカの5つのキノ ラウ (化身)の一つとされるマイレは、ハワイの儀式に欠かせ ない。結んで輪にするのではなく、両端を開いた状態で身 につけるこのレイは、敬意と結びつきを象徴することから、 結婚式において特に重要な意味を持つとされる。

ピカケ
真珠のように白いピカケのつぼみは、その上品な芳香から、婚礼用のレイに使われる花の中でも特に貴重なものとされている。もともとはインド原産のジャスミンの一種で、ハワイ固有の植物ではないものの、1860年代に外国の貿易商人によってもたらされて以来、ハワイに深く根付いてきた。優美な香りのつぼみに魅了されたカイウラニ王女は、ワイキキの邸宅に何本もの木を植えたと伝えられている。王女の愛する孔雀たちがその茂みの木陰で羽を休める姿にちなんで、やがてこの花は「ピカケ(ハワイ語で孔雀の意)」と呼ばれるようになった。ハワイの結婚式では、花嫁は幾重にも重ねたピカケのレイを身につける。

パカラナ
黄緑色のパカラナの花は、柑橘を思わせる芳醇な香りで珍重されている。ピカケと同様、アジアからハワイに持ち込まれ、時を経てハワイのレイ文化の中に溶け込んだ。小さく優美なパカラナの花は、いくつもの連に編み上げ、それらを撚り合わせることで、より存在感のあるレイに仕上げることができる。パカラナの開花時期は限られていて、通常4月から9月にかけて出回る。現代のハワイでは、パカラナは香りや洗練さが重視される結婚式や特別な場において用いられることが多い。


