この夏、ハレクラニでは、サーフボードメーカーのホク・クピヘア、テキスタイルデザイン会社のケアロピコ、そしてハレクラニ専属のサーフィンスクール、ゴーン・サーフィンのコラボレーションによる「アート オブ サーフィン」を公開します。ハンドシェイプされたクピヘアのサーフボードにケアロピコのデザインを施した、他では見られないユニークなサーフボードが並びます。
シェイパー:ホク・クピヘア
ホク・クピヘアさんがサーフィンを始めたのは、サンディービーチでのボディボードであった。バスの運転手の父親が、朝9時に島一周ルートのスタート地点で彼を降ろし、最後の一周が終わると午後5時に彼を迎えに来てくれた。ワイキキのルートでは、カラカウア通りの端にあるサーフブレイクの「ウォールズ」で息子を降ろし、「カーブを曲がるたびに、僕を見てくれていた」とクピヘアさんは当時を振り返る。父親がウエストサイドのルートを始めたとき、彼は気づいたという。「サーフボードに乗らなきゃ、この波は大きすぎる」。
クピヘアさんがサーフボードシェイピングの世界に入ったのは、レイルを変えたり、テールを広くしたり、ノーズを丸くしたりすると、サーファーのライディングにどう影響するかという「真の純粋な好奇心」から生まれた、まさにセレンディピティ(偶然の産物)だった。ほとんどのシェイパーは一部の工程を外注するが、シェイピングから仕上げのグラッシングまで、クピヘアさんは最初から最後まですべて一人で行う。「コントロールフリークという訳ではなくて、単にボードの全ての作業に関わり、全ての工程を理解したいからなんだ」と彼は言う。そして新しいものを試すことを恐れないクピヘアさんだが、かといって基本を疎かにすることはしない。
約15年間シェフとして働いた経験から、彼はよく料理を例に挙げる。「忍耐力、細部へのこだわり、忠実にレシピに従うこと。料理の世界で学んだすべてが役立っているのさ」。
クピヘアさんは、サーフィンとシェイピングの歴史にも惹かれている。ネイティブハワイの彼は、伝説のウォーターマンでモダンサーフィンのパイオニアであるデューク・カハナモクや、革新的なボードシェイパーのベン・アイパといったネイティブハワイアンからインスピレーションを受けている。そのためクピヘアさんのボードは、60年代や70年代のシェイプを参考にしながらも、彼が「ニュースクール・フリップ」と呼ぶ、独自のタッチを加えたレトロな雰囲気に仕上がっている。そして彼にボードを委託するサーファーたちと綿密に話し合い、彼らのスタイルや体格に合ったボードとは何かを考え、色や水面での動作に合わせて形を変える。
彼の使用する控えめなロゴも、過去に根ざしたもので、シンプルで小さな逆三角形は、ハワイの人々にとっては「水」を意味するシンボルだ。彼は、父親のバス運転手時代の古いアロハシャツから、布を三角形に切り取り、ボードの裏側に貼る。サーフボードと同様、この三角形も唯一無二の芸術品なのだ。
インストラクター:ジョアン・"ジョージョー”・ハワード
ジョアン・“ジョージョー”・ハワードさんは、イタリア、フィレンツェでの観光プロモーションやチリのサンティアゴでの英語教師など、世界各地でさまざまな仕事を終えるたびに、サーフィンを教えるためにハワイに戻ってきたという。「ハワイのビーチで年配のおじさんたちと一緒に働いて、たくさんのことを教わったわ」と彼女は言う。「いつ戻ってきても最高の仕事なの」。
彼女のサーフィンインストラクター歴はかれこれ20年近く、サーフィンの経験はもっと長い。「水の中にいるのが大好き」と彼女は言う。「サーフィンの難しさが好きなの」。一日一日が違うようにひとつとして同じ波はない。それがサーフィンを教えることの難しさであり、彼女を惹きつけてやまない理由でもある。
恋に落ちる感覚と似ているサーフィンの喜びを言葉にするのは難しい。だが初めて波に乗ったときには、誰もがそれを瞬時に知ることができる。それをハワードさんは日々目にしている。彼女は中級者サーファーのコーチもしていて、クライアントの中には物事を常にコントロールすることに慣れている人たちが多いという。「厳しい規則や忙しいスケジュールに合わせて生活を送っている人たちが、そこから少し抜け出すのを見るのは楽しいわ」と彼女は言う。「ここを通って90度でターンする、なんて決まった通りにサーフィンはできないから、その瞬間を楽しんで、そのとき正しいと思えることをするしかないのよ」。
ハワードさんのサーフスクール「ゴーン・サーフィン・ハワイ」は最近、ハワイで“最も完璧なブレイク”の一つだという、彼女のお気に入りのサーフスポットの前にあるハレクラニと提携した。ゴーン・サーフィンは、ハレクラニ専属のサーフスクールとして、サーフィンを取り巻くハワイのネイティブ文化を積極的に取り入れることに力を注いでいる。ミクロネシアの血を引くハワードさんは、「私は自分の文化、ハワイの文化、そしてオセアニアのすべてが大好き。でもサーフィンの世界では、特にサーフィン発祥の地であるハワイの文化があまり表に出ていないの」。
ハワードさんは現在、ハレクラニとホテルの敷地内にネイティブハワイアンのアーティストの作品を扱う小さなリテールスペースの建設を計画しているほか、モロカイ島のデザイナーブランド「ケアロピコ」の布をあしらったホク・クピヘアのサーフボードシリーズの製作を依頼している。ハワードさんは、このユニークなボードコレクションによって、ゲストがさまざまなサーフボードの形を試せるだけでなく、彼女がサーフィンを好きになったハワイや島のコミュニティとより深くつながるきっかけになればと願っている。
デザイナー:ケアロピコ
アロハプリントといえば、ヤシの木、プルメリア、ハイビスカスなどが思い浮かぶが、実はどれもハワイ原産の花ではない。2006年、ネイティブハワイアンの血を引く3人の友人、アネ・バクティスさん、ヒナ・クネブールさん、ジェイミー・マカソベさんは、「私たちの祖先と、私たちが故郷と呼ぶこの場所に敬意を捧げる」服や布のデザインを作ることに決めたのだとマカソベさんは話す。そこで生まれたのが、かつて食用やレイ用に採取されていたさまざまな二枚貝のオレぺや、ハワイアンの人々が花が咲くとサメの繁殖期になると言う絶滅危惧種のウィリウィリを使ったプリントだ。
3人は、バクティスさんの植物学、クネブールさんの植物学とハワイ語、マカソベさんの広報とインテリアデザインと養魚池の修復といった、それぞれの経歴を合わせてハワイ固有の植物や動物や文化を讃えるスタイリッシュで遊び心のあるプリントを考案した。会社名は「ケアロピコ」。直訳すると「魚の腹」という意味だ。「クプナ(年長者)たちが最も美味しいという魚の腹の部分です」とマカソベさんは説明する。
サーファーでもある3人が、サーフボードシェイパーのホク・クピヘアさんとのコラボレーションに至ったのは自然のなりゆきだった。サーフィンをしていたとき、マカソベさんがクピヘアさんのサーフボードのロゴにアロハプリントの布が使われているのを見て、ケアロピコのデザインをクピヘアのボードに使うことを思いついたのだという。
一枚一枚カスタムで作られるクピヘアとケアロピコのサーフボードは、色やサーファーが乗る波の種類、ロゴに使う好みの生地などについて会話することから始まる。最近、一人の客から、ヒヒマヌ(エイ)の柄のボードをリクエストされたというマカソベさん。「そのボードで波の上で踊るなんて、なんて優雅なんでしょう」。ハワイ語でヒヒマヌには、エレガンスという意味もあるのだそうだ。
サーフボードは、彼女たちの祖先へのオマージュなのだと彼女は説明する。「彼らは何世代にもわたって波に乗って遊び、海とのつながりを大切にしてきました。それは海で踊ったり遊んだり、喜びや笑いを分かち合えること。波をつかまえるのは、最高の気分なんです」。