ハレクラニを代表するフレンチレストラン「ラ メール」の一角に佇む「L’Aperitif(ラペリティフ)」は、 “生きる歓び”を湛え、人を自然と長居させる空間である。その名は、食事前に供される軽やかで時にほろ苦い一杯に由来する。しかし、この洗練されたバーは、ディナーの序章というより、単独で訪れたくなる目的地のような場所だ。
ゲストは、厳選されたフランス産スピリッツやクラフトカクテルを求めてラペリティフを訪れるが、42年にわたりカウンターに立ち続けるヘンリー・カヴァイアエアの存在に惹かれ、再び足を運ぶ人も少なくない。黄昏の黄金色のひとときから夜の親密な灯りに移ろうまで、彼はこの由緒あるバーの舞台を最大限に生かし、すべての瞬間を特別なものにしてきた。カウンターに腰を下ろせば、エリザベス・テイラーやライオネル・リッチーといった著名人との思い出話や、ワイキキが広大な湿地帯から世界のジェット族が集う街へと変貌していったハワイの旅行黄金時代の歴史を、彼は静かに語ってくれる。



しばらくすると、カヴァイアエアはハワイの酋長であり健脚の走者でもあったナエオレの伝説も聞かせてくれるかもしれない。ナエオレは、後にハワイ王国を統一することになるカメハメハ大王の守役(カフ)として、幼い王子を抱え、ハワイ島コハラ海岸の険しい道を越えて安全な地へ導いたという。さらに、父や兄とともにハワイ諸島最南端のカ ラエで夜釣りをした思い出も語る。頭上には天の川が輝き、大地は千年前、ポリネシアの航海者が上陸した当時と変わらぬ、荒々しくも美しい自然のままだった。
物語は次々と自然に紡がれ、店内に吹き込む柔らかな風や、芝生の向こうから流れてくる生演奏のハワイアンミュージックに寄り添うかのように流れていく。このゆったりとした独特の空気感こそ、 カヴァイアエアをはじめ、多くのハレクラニのスタッフが何十年にもわたりここに留まり続ける理由だ。ラペリティフは、慌ただしい現代の 日常の中で立ち止まり、今この瞬間を味わう貴重な機会を与えて くれる。過去が、まるで旧知の友人のようにそっと隣に腰を下ろす、 そんな場所である。
ディナーを締めくくる食後酒
「『バーは何時まで開いているのですか?』とよく聞かれますが、私は『レストランにお客様がいる限り開けていますよ』と答えます。ラ メールで素敵なディナーを楽しむなら、食後酒を味わう時間も含めて、ぜひ丸ごと体験してほしいですね。」

ハレクラニのシグネチャー マイタイ
「当ホテルのマイタイは、世界に名高いトレーダー ヴィックスのオリジナルレシピに忠実に作られた、特別な一杯です。自慢の一杯であり、個人的には最高のマイタイだと思っています。まずライムをひと絞りし、一部のバーで用いられるロックキャンディシロップではなく、シンプルなシロップで作った自家製マイタイミックスを加えます。次にレモンジュースを約30ml、バカルディ ゴールドとバカルディ ブラックをそれぞれ約22ml注ぎます。グラスをクラッシュアイスで満たしたら、仕上げに「レモンハート151」ラムをフロートし、ミント、オーキッド、ライムで華やかに飾ります。」
長年のスタッフと常連のお客様
「ここで働くウェイターたちが長年にわたり安定していることも、誇りに思っています。開業当初から働き続けているのは、今も約40名ほどいます。42年の歳月の中で、多くの常連のお客様とも親しくなりました。何年もお会いしていなくても、顔はしっかり覚えています。常連の方々の多くに、『引退しないですよね?引退したら来ませんから』と冗談交じりに言われることがあります。すると私は、『わかりました、まだまだ続けます』と答えるんです。」


バーテンダーという存在
「昔は、バーテンダーはセラピストのような存在でした。悩みを打ち明け、心を軽くする場所。私の役目は、来店された方々がリラックスし、日常の不安を忘れられるようにすることです。だからこそ、まだ引退していません。ここでその役目を果たせると感じているからです。」


かつてのワイキキを思う
「私は、古きハワイと新しいハワイをつなぐ架け橋のような存在だと思っています。ゲストには、レストランやホテルの黎明期、島々の歴史を語り、他では味わえないハワイを体験してもらいたいのです。高層ビルが景色を遮る前のワイキキがどんな場所だったかも。ここではその面影を感じられます。美しいカクテル、ダイヤモンドヘッドの眺め、吹き抜ける風、流れるハワイアンミュージック。それはまるで時を遡ったかのようなひとときです。」

