ククル カ イケ イ カ オプア。
知識は雲の中に宿る。
旅行者にも、カマアイナ(地元住民)にも、ハワイの空は尽きることのない美しさと驚きを与えてくれる。私たちは、ドラマティックな夕焼けを写真に収め、夜空に広がる星座に心を奪われる。「天国にふさわしい館」を意味するハレクラニという名が示すように、空は人間の想像力をかき立てる。それは、常にうつろうキャンバスのようだ。見上げると、心が静かに澄み渡り、畏敬の念とともに、はるか彼方に何か大いなるものを感じさせてくれる。
古代ポリネシアの人々にとって、空は単なる風景ではなく、意義と知識を授けてくれる存在であった。キロと呼ばれる熟練の観察者たちは、空に意識を向け、雲の形や星の動きを読みとりながら、洞察を深めて、生き延びる術を見いだしていた。
かつてポリネシアの人々は、空や自然界からのさまざまな兆しを頼りに、何千マイルもの外洋を航海していた。特定の星が昇る方角や沈む位置を手がかりにし、陸地が近いことを告げる鳥や雲の動きにも細かく目を配った。この自然との深い結びつきがあったからこそ、最新の航海器具を使わずとも、広大な海を自在に行き来できたのだ。



こうした祖先の叡智の多くは、植民地化とそれに続くハワイ先住文化への抑圧の中で失われていった。しかし、1970年代に始まったハワイアン ルネサンスが、西洋との接触以降、ほとんど消えかけていた伝統的な航海術や文化の営みの復興につながった。今日では、現代の航海士やキロたちが、このイケ(知識)を掘り起こし、分かち合いながら受け継いでいる。
ここで紹介するのは、ハワイ原住民が道しるべとしてきた星座や雲、星々のほんの一部にすぎない。それぞれが、クプナ(祖先)たちがこの世界をどのように見つめ、どう受けとめていたかを映し出す窓なのだ。次に空を見上げるときには、ただの風景としてではなく、遥か彼方から語りかけるものとして捉えてみてほしい。どの星も流れる雲も、大地と海と空、そして精霊との間で交わされる対話の一部なのだから。
マカリイ
秋が深まる頃、日暮れ後の東の空低くに七つの星が寄り添うように輝き始める。このマカリイは、西洋ではプレアデスとして知られるが、古代ハワイにおいては季節の移ろいや社会の営みの変化を告げる星と考えられていた。マカリイが空に昇ると、ハワイ歴の新年とマカヒキの季節が始まるのだ。マカヒキは神ロノに捧げる平和と収穫、そして心を再生させる時期として、ハワイ暦でも最も重要な節目とされている。モオレロ(伝承)によれば、マカリイという名は欲深い首長にちなむ。その首長は、飢饉の際に税として集めた食糧を民に分け与えず、手の届かない天空に吊るした網に隠したという。飢えに苦しむ人々を救ったのは、イオレという名のネズミだった。天空へ昇り網をかじって食料を地上へ落としたことで、民はようやく餓えから解放された。今日でもマカリイはホオイロ(雨季)の到来を告げる星団として知られ、ひんやりとした空気と冬の雨の季節が近いことを教えてくれる。


アオ イリオ
へ ホアイロナ ケ アオ イ イケ イア。
予兆としての雲。
アオ イリオ(犬雲)は、空を群れのように流れる雲だ。たいがい暗くて長く、まだら模様が特徴で、その姿には戦の神であるクーの荒々しい精神が宿っていると、古代ハワイ先住民は信じていたという。アオ イリオは天候の変化の前触れとされ、多くの場合、数時間以内に雨や風をもたらした。キロたちはこうした雲に兆しを見いだし、未来を予測する手がかりとした。


マナイアカラニ
夏から秋にかけて、大きく弧を描くようなマナイアカラニが南の空に現れる。モオレロによれば、マナイアカラニは半神マウイの神聖な釣り針で、マウイはこの釣り針を使ってハワイの島々を海の底から引き上げたとされている。このお馴染みの星座は、蠍座に関連しており、ナ オハナ ホク エハ(四つの星の家族)と呼ばれる星の分類体系の一部だ。この分類体系は、現代ハワイの航海士が考案したもので、季節と方角に応じて夜空の星々を四つのグループに分けたものだ。航海者たちはナ オハナ ホク エハを使い、航海に際して重要となる星がどの方角から昇り、どこへ沈んでいくのかを覚える。マナイアカラニは天の羅針盤として、長い航海において旅人を導いているというわけだ。

ホクレア
西洋の天文学でアークトゥルスとして知られるホクレアは、ハワイ諸島の真上を通過する天頂の星である。マナイアカラニと同様に、ホクレアもナ オハナ ホク エハに属し、星の羅針盤のなかでも中心的な役割を担っている。航海者たちは、この星を手がかりに進むべき方角や現在の緯度を読みとる。ハワイの航海者にとって、ホクレアが真上に輝くとき、それは「家にたどり着いた」ことを意味しているのだ。
1975年、ポリネシア航海協会は、この導きの星に敬意を込めて、彼らの双胴カヌーを「ホクレア」と名付けた。ハワイからタヒチへの初航海では、伝統的な航海術のみを用い、古代ポリネシア人が広大な外洋を渡るために卓越した航海技術を駆使していたことを証明した。これは、古代ポリネシア人の航海技術を長らく否定してきた西洋の学者たちに対する反証となったのだ。「歓喜の星」を意味するホクレアという名には、ポリネシアの航海文化における特別な意味が込められている。長い旅を経て、頭上にこの星を見たとき、それは目的地に無事にたどり着いた旅の成功を告げてくれる。

アオ マヌ
巻雲と呼ばれる繊細なすじ状の雲が、筆で描いたように空高くに広がる。古代ハワイの人々は、その姿をアオ マヌ (鳥の雲)と名付けた。羽のように見えるこの雲は、氷の結晶だけからできている。アオ マヌが空に現れると、当時のキロたちは、強風が吹く前兆ととらえた。現代の気象予報でも、巻雲が多く見られるときは前線の接近や天候の変化を示すものとされている。

アオ ヘキリ
アオ ヘキリ(雷雲)が空を覆い、辺りが暗くなると、カネ ヘキリが近くにいるといわれている。カネ ヘキリはハワイの雷神で、ペレの兄弟にあたり、自然界でも霊界でも強大な力を宿している。雷をアウマクア(家族神または祖霊)とする家系では、カネ ヘキリを崇めている。嵐のときには、カネ ヘキリの信奉者たちはそのカプ(掟)を守り、静かに過ごす。夢に現れるカネ ヘキリは、体の片側が黒く、もう片側は白い人間の姿をしていると伝えられている。
カネ ヘキリをアウマクアとする首長やカフナ(神官)の多くは、強い統率力を備えた指導者だった。マウイ島東部のあるカフナは、神の霊に憑依され、自らを守るために雷雨を呼び起こすことができたと語り継がれている。マウイ島最後の統治者であったカヘキリは、雷神の一族であることを示すため、体の片側全体に入れ墨を施していた。今日でも、アオ ヘキリは自然の圧倒的な力と畏怖を思い起こさせる存在なのだ。



