先ごろホノルル美術館で開催された特別展では、細長い形をした作品の一連が、「アートに触れる」という、美術館では思いもよらない行動へと来訪者をいざなっていた。陶芸家として高く評価されているトシコ・タカエズの作品が、彼女の大規模回顧展会場のいたるところに展示されている。吊り下げられた器は、その陶芸作品を模して作られたもので、実際に持ち上げて振ると、中でカラカラと音を立てた。 Toshiko Takaezu—the hanging vessels were made to be lifted and shaken, encouraging you to rattle the contents enclosed within.
2017年から美術館で学びと交流を担当するディレクターを務めるアーロン・パディーヤ氏は、こうした出会いを生み出すことに力を注いできた。彼の指導のもと、展示チームは、壁に貼った解説文の枠を乗り越えて、物語を紡ぎ出してきた。空間デザインを通して、今回についていえば、実際に触れることを通して、来館者に気づきを芽生えさせる。小さいながらも、意図の込められたさりげない工夫が、鑑賞を参加へと変えていく。芸術家の作品を単に展示するだけでなく、芸術家が見る世界を伝える環境を作り出すことが、この試みの狙いなのだ。



「本当の意味で難しく、時にはしっくりこないと感じる仕事というのは、自分のものとは異なる意味を理解し、あれこれ試しながら、展示という形に落とし込む方法を見出すことです」と、パディーヤ氏は語る。 「人はみな、それぞれに視点があり、偏見をもっています。それが人間であるということなのです。この仕事における成功というのは、めったに自分自身や私たち美術館によるものではないと気づきました。それは、自分以外のすべての人々、そしてその人たちがもっている、さまざまなものの見方によるものなのです」
2008年、ホノルル美術館で副学芸員を務めていたパディーヤ氏は、「オール・アバウト・テキスタイル」という展示の企画に携わっていた。この展示では、来館者に美術館所蔵のテキスタイルコレクションをより深く理解してもらうように工夫を凝らしていた。織りや結びの技法には、手で触れられる模型を使い、参加体験型の学習教材を取り入れたのだ。この展示は、パディーヤ氏の教育への取り組み方を形成するにあたって、大きな意味をもつことになった。そして、人は実際に手を動かすことで理解できるようになるという、彼の確信を深めることになった。

その感性は、パディーヤ氏自身の作品制作の根底にも流れている。 「ノッツ(結び目)」と題された作品は、幼い頃に釣り針の結び方を学んだ記憶から生まれたもので、一見単純に見える形がもつ複雑さを探る試みである。ハレプナ ワイキキに展示されている「ノッツ」という彫刻作品についてのステートメントの中で「父は『こうするんだよ、さあ練習してごらん』といっていました。そして、私は何度も何度も、何百回と繰り返したのです。それが体に染みつくまで、目を閉じていてもできるようになるまで。要領を得ず複雑だったものが、明確でシンプルなものへと変わるまで」と、パディーヤ氏は振り返った。
結び目をテーマにした作品と並行して過去10年にわたり手がけられた、もう一つの彫刻シリーズは、織物のように繊維が組み合わさっていく構造を思わせる。「ノッツ」と同様、それぞれの彫刻には、パディーヤ氏が角度をつけた楔形に切り出した角材を使い、一つひとつを組み上げ、流れるような、うねりを帯びた造形を作り出している。

高級コンドミニアム「パークレーン」の依頼で手がけた作品において、パディーヤ氏は、織りと結び目の図案についての習作に、思考や考え、会話といったものを物理的な形で表現するという、氏が以前から抱いていた関心を重ね合わせることにした。「何年か前、公共空間の座席の上に設置する壁掛けの彫刻作品を依頼されたことがありました。私は、その作品で、そこに座る人々の思考や会話を、まるで漫画の吹き出しのように表現しようと試みながら取り組んだのです」と、パディーヤ氏は語る。「パークレーンでは、これまで手がけてきたどの作品よりも大きなスケールのものを求められました。ですから、作品を複数の組み立て式の部材に分けて制作することが重要でした。そうする中、(私がこれまで模索してきた)考えや会話という概念を踏まえて、4つの構成要素から『ハッシュタグ』が生まれたのです」

パディーヤ氏は、しばしば意図的に、松、楓、木材、そして漆喰といった素朴な素材を使用する。「仕上げに関しては、何か違ったもの、ありふれていながらも、意外性のあるものを使いたかったのですよ」と、パディーヤ氏は語る。「パークレーンは、こだわりをもった場所です。そこで、『らしくない』ものを仕上げに使ったらどうなるのだろうか」。そう自問した末に行き着いたのがカゼイン、ミルクペイントの使用だった。それは一般的には漆喰と呼ばれる技法で、氏は地元のアーティストから教えてもらったという。「中でも磨き上げることによって、これは本当に素晴らしい仕上がりになると気づいたのです。時とともにかたくなり、途方もなく深みのある表面を作り出してくれるのです」
パディーヤ氏が、こうした日常的な素材から引き出す深みは、氏の美術館での仕事における核心とも響き合っている。難しいのは、ただ人々の目を引くことではない。その視線を釘付けにし、一見しただけでは見えてこない本質を浮かび上がらせることだ。氏は、そのプロセス自体を、ひとつの創作活動として追求している。「私が行なってきたすべてにおいて、願ってきたことがあります。それは、人々を立ち止まらせ、何かを、そして自身の内面を深く見つめさせること、つまり彼らの心を揺さぶることです。そしてそれができれば、私は何か正しいことをしたのです」と氏は語る。


